(111)古い文庫本や小説への思い(4)『吸血鬼カーミラ』

お知らせ
創元推理文庫「吸血鬼カーミラ」の目次を引用

 さて、今回は、貴重な資料ともいうべき、この何度も写真を見せている、『吸血鬼カーミラ』の小説を訳された平井呈一先生が、その本の最後に書かれている“解説”の部分をお目に掛けたいと思っております。何せ、この本は今をさかのぼるところ、ほぼ51年の1970年に初版、1971年に第4版を重ねた、創元推理文庫からの本で、何と200円で売られていたものですから、かなり古いことが分かります。ではいかに解説を引用いたします。作者のジョゼフ・シェリダン・レ・ファニュさんのことについて書いております。

何回も掲載しておりますが、古い、創元推理文庫の『吸血鬼カーミラ』です。なんと200円です。初版が1970年とのことです。ちなみに、わたくしはこれを古本屋で50円でゲットしました。こんな貴重な本なのに、50円ですわなも……。

『イギリスにおける怪奇小説の黄金時代といわれる、いわゆるヴィクトリアン時代に怪奇作家として断然他を圧して高くぬきんでている大きな存在といえば、なんといってもまず第一にジョゼフ・シェリダン・レ・ファニュを挙げなければなりません。生涯の著作、長編小説が十五篇、短編小説約八十篇という分量からみても、当時の一流大家のなかに伍して。毫(ごう)も遜色のない、多産な制作ぶりと申せましょう。もっとも、この長編十五篇というのは、全部が全部怪奇小説というわけではありません。当時の時流を反映して、犯罪、殺人、陰謀、復讐をテーマにした、いうところのスリラー小説が大部分を占めているのでありますが、そのなかで、彼の三大傑作といわれている“Uncle Silas”(「サイラス叔父」)、“The House by the Churchyard”(「墓畔の家」)、“Wylder’s Hand”(「ワイルダーの手」)、この三つは怪奇長編小説のクラシックとして、今日なお復刻されて版をかさねております。——-短編のほうは、これは八十篇のうちの三分の二以上が純然たる怪奇もので、しかもそのどれもが高い水準に耐えられる、名作の名に値するものばかりであるのは、多くの怪奇作家の中でもまったく異数と申さなければなりません。M.R.ジェイムズ(本文庫『怪奇小説傑作集1』収録の『ポインター氏の日録』の作者。同書解説参照)が、「イギリス第一級の怪奇作家」と折り紙をつけたのも宜(むべ)なるかなであります。今日のこの小さな訳著は、幸い未発表の新訳も三編ほど加えましたので、イギリス第一級怪奇作家の片鱗を多少なりとも伝えたかと、いささか自負している次第ですが、訳者としては、もし時間と機会が許せば、もうあと十編ぐらいを加えて、「レ・ファニュ傑作選」を何とかして編みたいと思っております。(以上、訳者の平井呈一氏からの“解説”引用)

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ブログの文中でも説明していますように、これが、平井呈一先生のあとがきの部分の解説文のほぼ全部です。貴重な資料で、古い本なので、もうなかなか皆様が読むことはないかと思い、引用させていただきました。深謝‼

 さて以下はネタバレもありますので、要注意です。『吸血鬼カーミラ』は『吸血鬼ドラキュラ』に比較すれば、非常に短編と言えるわけですが、内容は面白いです。女性の吸血鬼で、母親とふたりで、貴族などの宴会にやってきて、母親が具合悪くなったとか、突然他国に重要な旅に出ることになったので、その魅力的な娘カーミラを、2年ほど預かってほしいと依頼します。頼まれた方の貴族にも、ちょうどカーミラと同じ年頃の美しい娘さんがいるのですが、結局この娘の血を吸って、とり殺してしまうという訳です。皆様も、他にも何か、ステキな“吸血鬼”の古典ともいえる小説があったならば教えてくださいませ。

 こういうことを書いていると、また突然に、前述のクリストファー・リーさんやピーター・カッシングさんの出演している『吸血鬼ドラキュラ』もしくは、ゲイリー・オールドマンさんの同じドラキュラの映画を観たくなりましたので、もしDVD等ご持参の方がいらっしゃったら、お貸しいただけないかとも願っております。ではこのシリーズはここまでにいたしましょう。《第4回目終了》

コメント

  1. 塩川の田舎者 より:

    この本より先に発表されたのが
    『死妖姫』、野町二訳(1948年)
     ちくま文庫『ゴシック文学神髄』に収録されています。

    映画では、2019年?『カーミラ ―魔性の客人―』
    京都映画祭に出品されるも「百合」要素が強すぎたのか
    日本国内では上映されなかった??(未確定)
    日本語字幕のDVDは販売されていないようです

    • kazurin より:

      おお、『塩川の田舎者』さま、コメント誠にありがとうございます。わたくしにとって、初めてのコメントではないでしょうか?しかもマニアックで詳密な情報誠にありがとうございます。とても嬉しいです。探して是非読んでみます。“死妖姫”というのは、死んでいる妖しい姫(女性)という様な意味で、これが吸血鬼の事なのですね。楽しみです。今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。

  2. マニアックなコメントでスイマセン!
    ドラキュラ 血の味(1971年 クリストファー・リー)ですたらユーチューブにUPされていました。私は登録していませんが、クリックすると画面が動いたので無料で全てみれるかも?
    他のは検索していません。
    今日はハロウィン。街中に貴族(吸血鬼)が沢山はいかいするのかな?

    • kazurin より:

      さらなる情報誠にありがとうございます。クリストファー・リーのドラキュラの3部作の2番目くらいでしょうか?とても見たかった映画のひとつなので、さっそくトライしてみようと思います。ハロウィンに合わせて……。ありがとうございます。

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