皆様は“かわきも”という言葉をご存知でしょうか？これはレバーとか、ささ身とかもも肉？とか“かしわ屋さん”のショーウィンドウに並んでいる、あの、何と呼ぶんでしょうか？銀色の四角い金属の平たい大きな容器…“バット”というんでしょうかね、ステンレス容器ですね、それに入れて並べられている種類別の鶏肉ですね。ああ、それとかしわ屋さんというのは、今書いたように、鶏肉屋さんですね。今ももちろんありますが、公設市場などですと、昔は、お肉屋さんは、鶏肉と、それから、牛豚のお肉屋さんとは当然分かれていましたよね。
それでもう今では大昔となった昭和、それも40年代とか50年代の話ですけれども、いやいや、もっと古いから30年代の話かななどというと、わたくしの年齢が判ってしまう（別に秘密にしてはいませんが）かもしれませんが、父親に連れられてそういう市場に行った時、とても貧乏でしたから、かしわ屋さんで買うものといったら普通のレバーとかささ身ではなくて、ショーウィンドウの一番左端に並んでいるバットの中の、100ｇ10円（‼）の『かわきも』というひらがなで書かれた、薄い板の名札が付いているお肉でした。（多分、漢字で書けば『皮肝』でしょうね。今ネットで調べても、『かわきも』なんてほとんど出てこずに、一部“食肉用の若鶏ではなく、採卵用に長く生育された「親鶏」のバラ肉に皮・肝といった内臓肉を混ぜたもの…”と一部発見しましたが、たぶんそれではないと思います。それはどこかの地方の別種だと思われるし、またひょっとしたら、そういう地方出身の鶏肉屋だったかもしれませんが、そうだとしても、内容はそう変わらずに、とにかく安い、こう言っちゃ語弊がありますが、一番安い余りのお肉のようなものだったと想像できます。
そこで、かわきも100gとか200gを買うのですが、なんと100g 10円なんですよ。確かに昭和当時の値段ですので、こう聞いてもそれが安いのか高いのか、読者は判らないと思います。ま～高いとは思わないとは思いますが……。100ｇ100円じゃなくて10円なんですよ。……わたくしも子供でしたので、今聞いてもピンとはきませんが、別の例を挙げますと、当時、お魚屋さんで船盛り（ふなもり）といいますか、薄い竹の皮のような、人工の竹の皮のような、船の形になったお皿というか容器の上に、例えばマグロの切り身が10個か8個くらいでしょうか、それにツマの大根とパセリが1つと、少量のワサビが付いていて、それが50円とか70円とかの時代でした。今だとスーパーでそういうものは、プラスチックのお皿に盛られてサランラップのようなもので巻かれていて大体300円とか400円くらいになっていますが、そういうのが当時50円 から高くても100円くらいの時代でした。公設市場ですね。そんな時に、わたくしの実家のすぐそばの、名古屋市昭和区桜山（地下鉄桜通線の駅もあります）の公設市場で、左側の入り口から入って、4軒ほど過ぎた左手側の鶏肉屋さんで、『かわきも』100g 10円という値段で買ってくるのが、関の山のような家族でした。とにかく、どんだけ貧乏やねんって惨めな感じがしますが、前にも書いたように、父親は鎮静剤中毒で、母親は家出したりしていましたので、かなりの“窮状”だったとは思うのですが、小さいわたくしにはよくわかりませんでした。どうやって収入を得ていたのでしょうかね？まあしかし、世の中には殺人で両親を失ったり、交通事故の遺児もいます、どちらかと言えば裕福で幸福な生活をしていたのに、両親が突然の交通事故で両方とも死んでしまった…という人もいるでしょう。そういう人達に比べれば、わたくしの不幸なんかたかが知れていますけれども、要するに両親不仲とか父親が鎮静剤の中毒ということで、まあ晩年は喉頭癌でしたけれども、当時は別にガンというわけではなくそれなりに元気が良かったのです。わたくしの家には自動車はなくて、市外にこそドライブなどは連れて行ってもらったことは一度もありませんが、市内ならば鶴舞公園や名城公園など、合計すれば100回くらい、父親に連れて行ってもらった覚えはありますので、むしろ幸福な少年時代だったとも言えますが、父親の偏愛というか、偏った愛情で、小学校などは、わたくしが可愛くて、片時も離れたくないとのことで、わたくしは外に出してもらえず、結局合計すると、小学校の6年間のうち2年間ぐらいは休んで、家に父親と一緒にいたのではないかと思います。（当時の記憶は曖昧で、母親の映像は思い浮かばないことを思うと、母親は家出していたのでしょう）（長くなったので、第１回目はここまでです。）
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